介護職が行う認知症患者のケアは、食事や入浴、排せつの手助けといった身体的な補佐を、患者の心を意識して行うことが大切。介護の際、親切心からなんでもやってあげたくなってしまうこともあるだろう。しかし、できることは本人にしてもらうことが重要なのだ。認知症になったとしても、プライドや羞恥心は薄れていない。今までできていたことができなくなることは、本人にとっては悔しいことなのだ。できることは本人に任せ、苦手なところを手助けする、そのようなケアが相手の自尊心を保つことができ、介護者との良い関係性を構築していくことに繋がると言えるだろう。
ケアを行う上でのよくある問題は、認知症患者からケアを拒否されてしまうこと。それは多くの場合、介護者と患者の意思の疎通ができていないことが原因と言える。例えば、衣服が汚れているとき、「汚れているから洗いますね」と言い、服を脱がそうとする。この時、最初の声掛けに気付いていなければ、急に服を脱がされたと思い怒り出してしまうことがあるのだ。すると、「この人は嫌いだ」という感情が残ってしまい、次から無視されたり、話を聞いてもらえなくなってしまうこともある。そうならないために、声をかける時は、相手の目線と自分の目線を合わせ、相手の目を見てゆっくりと話しかけると良い。一方的に話すのではなく、相手から反応があるのを待ち、それから衣服を着替えさせるなど行動に移すことが大切だ。相手は何も分からなくなってしまった人ではなく、介護する側と同じように、社会で生活を送ってきた人。相手の意思や考えを尊重する対応を心掛けたケアを行うように心がけたいものだ。